名古屋高等裁判所金沢支部 昭和57年(行コ)5号 判決 1983年9月28日
福井市江守町五四字二番地の四
控訴人
大西機械株式会社
右代表者代表取締役
大西仁太郎
福井市若栄町三〇八番地
控訴人
北鋼産業株式会社
右代表者代表取締役
増田敏一
右控訴人ら訴訟代理人弁護士
小酒井好信
福井市春山一丁目六番一号
被控訴人
福井税務署長
尾崎守
右指定代理人
林道春
同
西尾清
同
田村哲男
同
舟元英一
同
山本衛
同
岡田俊彦
同
谷内由明
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実
控訴人らは「原判決を取消す。被控訴人が昭和五一年三月三〇日付でした控訴人大西機械株式会社の昭和四七年八月一日から昭和四八年七月三一日までの事業年度分の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取消す。被控訴人が昭和五一年三月三〇日付でした控訴人北鋼産業株式会社の昭和四八年一月六日から昭和四九年一月五日までの事業年度分の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は主文と同旨の判決を求めた。
当事者双方の主張及び証拠関係は次のとおり訂正するほか原判決事実摘示と同じであるからこれを引用する。
原判決四枚目表八行目から九行目にかけての「六五条の六第一項一二のロの規定を適用しなかった」を「六五条の七、六五条の六第一項一二の規定を適用できなくなった」と、同一四枚目裏二行目の「同工場」を「本件建物内の工場」とそれぞれ訂正する。
理由
一 当裁判所も控訴人らの本訴各請求はいずれも理由がないから棄却すべきであると判断する。その理由は次のとおり訂正付加するほか原判決の理由と同じであるからこれを引用する。
1 原判決二五枚目裏八行目から同二六枚目表四行目までを「4(一) しかして、法人税法上、固定資産の譲渡による収益は、現金の収入がなくても、収入すべき権利が発生しこれが確定した日の事業年度に帰属するものであり、その確定時期は、譲渡契約の内容、所有権移転登記の時期、代金支払の方法、時期、当該固定資産の引渡しの時期、譲渡契約の履行状況、その他具体的な諸事情を総合して決定すべきものと解するのが相当である。法人税法基本通達二-一-三にいう固定資産の引渡しの日というのも、如何なる事実の発生をもつて右にいう引渡しに当るのか、具体的適用の場面となると、その内容は多義的に解しうる余地あることを免れないのであつて、単に引渡しというのみでは明確な基準を定めたものとは言い難い。引渡しが固定資産譲渡益発生の確定を画する徴憑の一つとなりうるものであることは首背できるとしても、右引渡しをもって常に譲渡固定資産について現実の占有移転が完了したことと解することは相当でない。」と改める。
2 同二六枚目表五行目の「前記2で認定したように」を「前記2で認定した各事実、殊に、」と訂正し、同二七枚目表初行「等の点に鑑みると、」とあるを「、控訴人らは昭和四八年三月六日、前記所有権移転登記を経由すると同時に、京福電鉄から残金六五〇〇万円の内金六〇〇〇万円の支払として同金額額面の約束手形の交付をうけており、また控訴人らと京福電鉄間に本件本地売買契約が締結されるに至つた双方の動機、契約内容等に照らすと、同日の時点で右契約の履行、目的の実現は確実となつたものと解することができるのであつて、」と改め、同表四行目のつぎに「控訴人らは本件土地全部の明渡を完了し、現実に右土地に対する京福電鉄の管理支配が可能となつた昭和四九年一〇月二六日をまたなければ、譲渡益の計上は不可能であり、同日をもつて基本通達二-一-三にいう引渡の日と解すべきであると主張するが、前示認定のような本件売買契約の内容、履行状況のもとでは、課税上譲渡益の発生が確定した時期は前記のとおり昭和四八年三月六日と認めるのが相当であつて、明渡を完了するまでは譲渡益が発生したことにならないというに帰する控訴人らの主張は採用できない。」を加え、同二七枚目裏九行目から一〇行目にかけての「六五条の六第一項一二のロの規定を適用しないで」を「六五条の七、六五条の六第一項一二の規定の適用に関する控訴人らの主張にふれるまでもなく、」と訂正する。
二 よつて原判決は相当であるから本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条、九五条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 山内茂克 裁判官 三浦伊佐雄 裁判官 松村恒)